この子らを救わん 愛の「おぎゃー献金」物語
それが私を今日までためらわせていた原因でした。 誘ってくれた H 記者の胸中も、私と似たようなものであったのではないでしょうか。こうして二人 とも、他人が見れば不思議に思うほど小むずかしい顔をして、無言のまま歩いていました。 彼女たちの家は意外なほど近くでした。私の家からは距離にして一・五キロほどです。そこに建つ 二軒長屋の一軒が彼女たち三人の住む家でした。案内を乞いますと 、 すぐに障子が開けられました。 そして私の目にいきなり飛び込んできたのが三人の姉妹だっ のです。 その四畳半の部屋には、腹ばいになったり、あるいは横になり、あるいは仰向けになって、異様な 叫び声を出 ながら三人の女の子が寝そべっていました。十六歳の長女、十一歳の次女、それに八歳 の三女です。姉妹ですから、顔かたちはよく似ていますが、その振舞いは三人三様でした。しかし、 どの子も人なつっこい笑いを浮かべ、苦悩の面影は少しも見あたりません。 応待に出て来た母親は、一見農家の主婦らしい頑丈な体つき 、その目は生き生きと輝き、その奥 には、温情あふるるものが光っていたようでした。 この、 口もきけず、歩けもせず、立つこともできない三姉妹をかかえた母親は、当然、毎日毎夜、 この子らの生活と看護のために、疲労困ばい はずなのに、疲れの色は少しも見せていません。 I I 目 は口ほどに物を言う I I のたとえの通り、この母親は、感激いっぱいの眼差しで迎えてくれました。 16
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