この子らを救わん 愛の「おぎゃー献金」物語
三姉妹の両親は、昭和二十一年の三月に結婚しました。彼ら双方の母親は実の姉妹で、いわゆるい とこ同士の近親結婚でした 。 地方ではお互いに親族をふやすために、このような結婚が多く行なわれ 天使との出合い という言葉が私の胸をジソと打つのです。もちろん私の父性愛などは 、 この母親に比べれば月とスッ ポソほどのちがいがあります。それほどに三人姉妹の母の愛は強かったのです。 健常者で あっ たならば、どれほど楽し く 心待ちに するであろう雛祭りも 、 三人姉妹のところには訪 れません 。桃の 節句や七五三は 、 この家にとっては縁遠い行事でしかないのです。ただ、子どもの中 では一人だけ障害を負わずに生を受けた長男だけはお祝いをしてもらいました。 こ い の ぼ り か ん と う 三月は寂しかったこの家の庭先に 、 五月に入って鯉戦が泳ぎはじめたのです。竿頭の矢車がカラカ ラと軽やかな音を立て、鯉は春風をいっぱいに吸って心地よさそうに泳いでいます。けれ 、 このど こにも見られる風景も 、 その家の中にいる三 人 姉妹のことを知る私にとって は 、喜びの 中 に何か胸に 重いものの残る、複雑な心境でした。 2
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