この子らを救わん 愛の「おぎゃー献金」物語

ありません。三姉妹はなぜか、この道からはずれて育っていったのでした。 実は、私が三姉妹の母親に会ったのは H 記者と一緒に訪問した日が初めてではありません。本当は それよりずっと以前に会っていたのでした。だが、そのときはわからなか す 。 ある暑い日の午後でした。一人の婦人が診察室を訪ねてきたのです 。 調べてみると妊娠六か月で 、 他にはなんらの異常 も認められません。訴えによりますと、家族の中に手足の運動障害の子どもが生 まれて、首も座 ないし、立つこともできない 。その 上家計も苦しく困っている 。も はやこれ以上の 負担にはとても耐え れないので、妊娠中絶と避妊手術を行なっても いたいとの依頼でし 。 すでに四人の子どもがおり、その一人が障害児だというのです 。 しかも母親は高年齢です。このこ とは、ダウソ症候群が示すように、高年妊婦 異常児が生まれる率が高いことから、優生保護法によ る妊娠中絶及び避妊手術 、適応となります 。 妊娠六か月の人工中絶は、多少の困難は伴いますが、 入院し てもらい、手続きをとって手術することにしました。 この患者こそ、いま思えば三姉妹 の母親だったのです。 もし、あのとき、母親が つつみ煕すことなく 、三人 の障害 児を抱えて困 っているこ とをあ っさり と 訴えてくれたならば、これに対す る対策も考えられ 、も っと早めにこのことは解決 していたか も知れ ません。しかし、母親を責めるのは酷というも ので しょう 。それはあまりにみじめで 、本当のことは 28

RkJQdWJsaXNoZXIy NDU4ODgz